我々は大学学級環境インベントリ(CUCEI)の日本語版を作成して、大学の講義型学級に適用してきた。採用した尺度は、関係性次元の「個人化」(教師が個々の学生と関わる程度)、「関与」(学生が授業に参加する程度)、「満足」(授業を楽しむ程度)、個人発達次元の「課題志向」(授業の活動が明瞭で組織的である程度)、システム維持・変化次元の「改革」(教師が新しい授業活動や教授法や課題を計画する程度)である。 本年度は従来の講義型科目10学級と、英語科目17学級のデータを追加した。講義型科目では、従来の知見から尺度の短縮化を試行し、一定の信頼性を確保できた。 講義型学級の結果は従来と同様で、「関与」「満足」「改革」の尺度は信頼性も妥当性も一定の水準をクリアした。しかし、「課題志向」は(「学業の達成」尺度を試行したが)他の尺度からの独立性という点では曖昧なままであった。 英語学級はカリキュラムの再編に向かっているため、データの蓄積に努めた。 一般の講義型学級と英語学級に加えて、受講生が自宅や大学のPCで任意の時間に授業を視聴できる「オンデマンド」授業を教室授業と併用した1科目の1学級と、「通信教育課程」の1科目の3学級を対象に、CUCEIを試行した。いずれも講義は13週程度に分割して「教室授業」を映像と音声で視聴でき、BBSで質疑応答が可能なシステムである。予備的分析では、「個人化」「満足」が明瞭で、教室授業とは異なり「関与」は曖昧であった。今後は伝統的な教室授業に加えて、これらの通信を利用した学習環境の特徴と限界を検討する。
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