研究概要 |
聴覚障害者と健聴者に対して,2つの認知・感性情報の処理実験を実施した. ■実験方法:視線追跡カメラ装着により被験者の操作経過の視線およびマウス操作等を追跡記録. ■分析内容:操作における視線軌跡・停留ポイントと停留時間などのデータから,操作フロー,操作時間,操作特性に関する分析を行った. 実験1について ■実験1:Web上でのタスク遂行実験;「車のカラーバリエーシーンを選択する」 ■目的:聴覚障害者を対象としたWebアクセシビリティのガイドライン整備につながる手がかりを探索する. ■結果:タスク遂行に要する時間は健聴者と比較して聴覚障害者のほうが長い.また,利用するリンクはダイレクト情報のみでありページ上のカテゴリ情報を利用することがなかった.視線を追跡してみると聴覚障害者がWeb上の情報を探索するとき,戦略的な動きがほとんど見られなかった.ページ全体を無計画に見てエラーを18回も繰り返す被験者も見受けられた.また,聴覚障害者は画像情報の利用頻度が高い傾向がある. ■考察:聴覚障害者の為のWebアクセシビリティにつながるデザインガイドラインは情報の構造とカテゴリが一目瞭然であることが望ましい.画像情報は内容が明確に伝わり有効に機能することが求めらている. 実験2について ■実験2:文字認知と空間認知の探索実験;5つのアルファベットを提示して内容を記憶する実験 ■目的:聴覚障害者の認知特性を探索する. ■結果:聴覚障害者と健聴者間の認知活動は「文字認知」の場合に差が見受けられた.「文字として内容を覚えてください」という課題に対し健聴者は文字そのものを見ているが,聴覚障害者は文字の間あるいは全体を見ているようであった.それらは定量的には「注視点運動数」の差となって現れている.また,聴覚障害者は文字認知の場合も空間認知の場合も健聴者ほどはっきりした認知の差が見受けられなかった. ■考察:聴覚障害者は文字情報も空間的に認知する傾向がある.
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