研究概要 |
聴覚障害者と健聴者に対して,視覚情報に対する感性認知的特性を抽出するために,眼球運動を調べる実験を実施した.その結果ウェッブ利用における聴覚障害者と健聴者の特性の違いがわかった.聴覚障害者はウェッブページ内の隠れた情報構造を読み取る場合に困難が見受けられた.情報の構造と内容がひと目で理解できるデザイン的な仕組みが必要であるという結果に基づき,聴覚障害者のためのデザインガイドラインを作成した。ガイドラインに沿ってデザインしたウェッブページを用いて再度同じ実験をした結果,聴覚障害者のパフォーマンスが飛躍的に向上したことから,デザインガイドラインが有効であることを証明できた. 次に,視覚情報に対する聴覚障害者と健聴者の差異の原因を追究するために,注意喚起に関する実験と,文字探索と空間探索の差異をみる実験等を実施した.その結果,聴覚障害者の視覚情報処理特性として,聴覚情報と視覚情報に関わる神経機構が競合しあいながら発達しているという傾向があるという結論を得た.この特徴は脳内の言語処理活動と深く関係すると考えられる.聴覚障害者にとってアクセシブルなウェッブコンテンツを実現するためには,文字や手話などによる音声言語情報の保障・補完という考え方だけでは不十分である. 視覚障害に関するウェッブガイドラインは,音声情報に置き換える音声ブラウザの能力制限との関係が最も重要である.視覚情報の有効利用と相反する一面を持っているが,スタイルシートなどできる限りの工夫によって,両立させることを試みた. 聴覚・視覚障害者のための大学である所属大学のホームページは,視覚障害者にとっても聴覚障害者にとっても,使いやすいわかりやすいことが求められている.実際に所属大学のホームページを制作し,実働させることによって,研究の成果を公開することができた.(http://www.tsukuba-tech.ac.jp.)
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