本研究は天文教育における学習支援を実施する母体として専門家・教師・児童生徒が参加する「インターネットを用いた学びの共同体(Collaboration for Learning with the Internet : CLI)」を構築し、その効果を評価することを目的としている。CLI標準化における課題を整理し、学校教育支援のための共同体としての一般化されたCLIのあり方を考察する。 具体的な研究内容として、 (1)支援する専門家、教師、児童・生徒の三者にとって有効な共同体のあり方(目的・組織)の検討 (2)三者が共通で利用可能なインターネットツールの開発(特に遠隔授業ツール) (3)家庭学習・生涯学習との効果的な連携の検討 の3つを揚げた。 それぞれについて次のような成果を得ることができた。 (1)天文学の普及・教育に関して先進的な事例を調査し、それぞれの共同体の特徴を明らかにするとともに、それらの緩やかな結合を目指した。この過程で共同体形成におけるIT活用の特徴も明らかになった。 (1)天文学の普及・教育に関して基礎的な調査をし、天動説を信じている小学生が4割にのぼることや日没の方位の理解が7割にとどまる等を明らかにした。これらの実態をふまえて学びの共同体では、科学リテラシー育成を目指した活動が大事であることを主張した。 (2)すばる望遠鏡FITS天体画像解析ソフトウェア「makalii」(日本語版、英語版)を開発し、海外と国内に頒布した。現在高校や生涯学習施設を中心におよそ800名のユーザーがおり、教育効果について論文作成中である。海外での利用調査も行った。 (3)平成15年8月に「マーズウィーク」、11月に「ワークショップ21世紀型科学教育の創造」、1月に「科学教育フォーラム2004」と新たな枠組みを目指した共同体事業を行い、後者2つに関しては平成16年度も継続実施し、それぞれ成果を得ることが出来た。
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