研究概要 |
10世紀のイスラムの天文学者アル=カビースィーによる占星術書(Introduction to Astrology)は、ロンドン大学ウォーバーグ研究所から2004年6月に出版された。それは、8種類のアラビア語写本に基づいた校訂版とその英語訳、12世紀に作られたラテン語訳の校訂版、そしてさらにアラビア語・ラテン語およびラテン語・アラビア語の語彙集から構成されている。またラテン語訳のみで残っている天文学論文も英語訳つきで、付録(pp.375-385)として収められている。その他に付録として、アル=キンディーの占星術文献の一部のアラビア語校訂版と英語訳が載っている。 「占星術師資格諮問」(The treatise on the testing of those who call themselves astrologers)の校訂と英語訳に関しては、アラビア語テキストの一部に不明な点がいくつか残ったが、大体においてテキストと英語訳が終了した。 「惑星の距離と大きさについて」(Treatise on distances and bodies)という論文については、アラビア語テキストの校訂のみがほぼ完成している。 最後に、9世紀の天文学者アル=ファルガーニーの「天文学綱要」に対するアル=カビースィーによる注釈については、ひとつしかないアラビア語写本(Istanbul, Ayasofya 4832)の状態が悪く、校訂作業を十分に進めることができなかった。またアル=ファルガーニーの著作自体も写本によってバリエーションが大きく、アル=カビースィーの注釈以前に、まずアル=ファルガーニーの著作の校訂を行なう必要性が出てきた。
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