研究概要 |
従来ダランベールを中心とする18世紀力学史の研究を行ってきたが,昨年度は18世紀力学の中心人物である,オイラーの力学論文を特に研究した. 平成15年9月3日に京都大学で行われた,京都大学大学院文学研究科21世紀COEプログラムに基づく「力学と数学-歴史的視点から-」と題する研究会において「古典力学の解析化について」と題して発表を行った.この発表において,解析化された力学は1740年代にオイラーにより始められたことを文献に基づき明らかにした.すべての力学の問題を解くことができる普遍的方法を模索していたオイラーは,直交座標系を取り,各成分に関して得られた一連の微分方程式を解くことにより,彼の目標が達せられることを示した.ここで初めてニュートンの第2法則が普遍的原理であることが明らかにされた. また,Wilfried Schroder氏により編集されたMeteorological and geophysical fluid dynamicsと題する論文集に掲載された論文では,ダランベールの地球の歳差運動を取り扱った著作を分析し,彼の力学が17世紀的な力の概念に基づき,非解析的方法で行われたことを論じた. 平成16年2月15日から3月15日までリヨン工科大学(Ecole Centrale de Lyon)に客員教授として滞在し,作成したダランベールの論文に対する注について,編集委員と検討した.また,2度の研究会において,オイラーの解析的力学の特徴について発表し,またパリ天文台に招かれ,ダランベールの力学の特徴について議論を深めた. なお,平成16年8月20日から9月25日まで日本学術振興会の特定国派遣研究者としてパリとリヨンに滞在し,ダランベールの論文の注を更に検討し,また18世紀の物理学者である,フォンテーンの力学に関する研究を発表する予定である.
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