研究課題
基盤研究(C)
東京文化財研究所が中心となって近年開発された可搬型の蛍光X線分析装置などを用いて、様々な彩色文化財の材質調査を行い、彩色材料や技法に関する新たな知見を数多く得ることができた。具体的な成果を以下に示す。1、薬師寺所蔵「吉祥天像」の彩色分析国宝「吉祥天像」(8世紀前半)について、彩色材料の調査を行った。ポータブル蛍光X線分析装置を用いて全49箇所の測定を行い、Pb系白色顔料が彩色下地として用いられていること、現在紫色と認識できる部分で5種類、赤色と認識できる部分で3種類の材料が使い分けられていることを明らかにした。2、MOA美術所蔵「紅白梅図屏風」の彩色分析国宝「紅白梅図屏風」は江戸期18世紀を代表する絵画である。ポータブル蛍光X線分析装置を用いて全57箇所の測定を行い、金箔と考えられていた部分で箔が使われていないこと、黒く描かれている川の部分で全く顔料が使われていないことなど、従来の定説とは大きく異なるデータを得た。3、奈良国立博物館蔵「十一面観音像」の彩色分析国宝「十一面観音像」(12世紀前半)について、彩色材料の調査を行った。ポータブル蛍光X線分析装置を用いて全121箇所の測定を行い、Pb系白色顔料が下地として用いられていること、2種類の青色材料が使われていることなどの新知見を明らかにした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
保存科学 第44号
ページ: 1-15
Hozon-Kagaku 44