| 研究概要 |
「永久凍土が存在すると,地形変化は強められるのか?」
「永久凍土が融解すると,どのような地形変化が起こるのか?」
これら二つの課題に明確な解答を与えることを目的として,日本アルプス,欧州アルプス,アラスカ山脈,チベット高原東部の高山地域に,凍土条件以外の環境・地質条件が同等な観測拠点を選定し,風化・物質移動プロセスの観測網を築いた.各観測地域での地盤条件,積雪・凍土状態についても,基礎的な調査を行った.さらに,世界の周氷河環境における既存の風化・物質移動プロセスに関する観測データを収集し,永久凍土が地形変化に及ぼす影響について評価した.具体的な研究内容と成果を以下に示す.
1)各地域の堆積岩からなる岩壁・岩屑斜面に観測拠点を設置し,亀裂変位・凍上・斜面変形・地温・地中水分・積雪探の長期連続観測を開始した.これまでに得られた観測結果から,亀裂膨張や凍上量の季節変化が地温と地中水分に依存することがわかった.
2)岩盤物性・土層構造に関する調査を行った結果,地表での土壌移動量は,表層付近の細粒土層の厚さに影響されることがわかった.
3)電気探査,地震探査,積雪底温度測定に基づいて,永久凍土の分布と探度を広範囲にわたり調査し,予察的な永久凍土分布図を作成した.
4)落石,凍上,斜面物質移動等の周氷河プロセスの既存データを総括した結果,地形変化の発生が初冬の日周期凍結融解期と初夏の季節的融解期に集中することがわかり,地形変化量が温度・水分・斜面物質・地形場の関数として表現されるという見通しを得た.
次年度は,通年の観測データと既存の気象資料を利用して,地形変化の長期変動を推定する.また,永久凍土分布と地形変化様式との関係を調べる.最終的に,(1)永久凍土が存在する場合,(2)季節凍土のみの場合,(3)永久凍土が衰退し季節凍土に移行する場合,について地形変化の様式と速度のモデル化を行う.
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