研究概要 |
2006年夏季に諏訪湖の水質観測を2回実施し,2002年〜2005年夏季に行なった水質観測の結果との比較検討を行った。2006年7月,諏訪湖集水域では豪雨があり,諏訪湖へも大量の河川水が流入し,諏訪湖でも例年とは異なる状況が生じた。豪雨から約2週間後の8月4日と約2か月後の9月20日に実施した水質観測により,水質分布を3次元的に把握できた。得られた結果は,衛星リモートセンシングデータ解析のための基礎データとして蓄積する。 2006年8月4日,9月20日の,諏訪湖60測点における表層4水質要素(SS, Chl-a, Trans., W.T.Om)を観測日毎に主成分分析し,それぞれ主要な水質分布パターンを抽出した。8月4日の第1成分は,2002〜2005年に6観測日において抽出されたものと同様である。「SS, Chl-aが大きい所では,Trans.が小さく,W.T.Omは大きい」「SS, Chl-aが小さい所では,Trans.が大きく,W.T.Omは小さい」。9月20日の第1成分は,これまでの観測結果とは異なり,Chl-aの変動を説明しないパターンである。 8月前半に水深3m以深での低水温が顕著であり,2006年7月豪雨の影響と考えられる。2002〜2006年12日分の表層水温から主成分分析により抽出された特徴的な分布(第1グループ)は,湖の東部で高温,西部で低温,中央部では平均的な値となる。この,「東部と西部の差異が大きい」パターンは,表層4水質要素による主成分分析により3観測日で確認されたものと類似しており,夏季に諏訪湖でしばしば出現している可能性がある。 衛星リモートセンシングデータは,衛星の運用状況や天候により利用しにくい面がある。研究代表者は,地元企業が諏訪湖上空からヘリコプターにより撮影した写真を2006年夏季数日分利用することができた。ヘリからの画像は詳細な湖の状況を把握することができるので,水草帯分布の季節変化解析などに利用できる。提供された画像は位置,日時,分布域が多岐にわたるため,画像データベースとして,検索できるシステムを開発した。また,諏訪湖表層の水質は湖畔から毎日定期的にライブカメラにより撮影し保存している。これらの画像のデータベースも作成した。2006年7月豪雨の後,湖岸には漂流物が大量に漂着したが,漂流物が蓄積される状況が,諏訪湖表層画像データベースにより把握できた。
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