本年度は、西日本の中国地方各地と、西日本の風上にあたる韓国の現地調査、および日本・韓国両研究者との研究打ち合わせを行った。得られた成果は下記のようである。 1)中国地方に分布する土壌・古土壌を採取し、粒度分析、ESR分析などを行った。主な研究地域は山口県秋吉台と豊浦町、広島県冠山山麓、島根県出雲市周辺、鳥取県大山と鳥取砂丘地、兵庫県の各地である。また比較研究の意味で関東ロームを採取分析した。これらの地域で採取した土壌・古土壌試料の分析結果は、いずれもアジア大陸起源の風成塵の影響を強く受けていることを示した。 2)中国地方に飛来堆積した風成塵は、最終氷期にはアジア北方先カンブリア紀岩地域から北西風によって運ばれ、完新世においては中国内陸部の沙漠から偏西風によって運ばれたことが確認された。 3)岡山県北部の細池湿原で掘削した泥炭コアの分析によって、西日本では過去3万年間において、温暖期に夏季モンスーンが強くなり、降水量が増加したために流水物質の堆積が増加した。逆に寒冷期には冬季モンスーンが強くなり、乾燥化してアジア北方地域から運ばれた風成塵が堆積したことが明らかになった。 4)韓国北部、全谷里遺跡に堆積する厚いレスを分析し、レスが酸素同位体ステージ8から堆積を始め、温暖期に古土壌が、寒冷期にレスが堆積したことを明らかにした。また、韓国南西部の木浦市でも現地調査を行い、ここではステージ10からレスが堆積を始めたことを明らかにした。韓国は風成塵の給源地であるアジア大陸と風成塵の堆積地である西日本との中間点にあたるので、本研究にとって重要な地域であることが確認できた。
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