研究概要 |
本年度は,西日本の中国地方各地と,西日本の風上にあたる韓国南部西海岸において現地調査を行った。得られた成果は下記のようである。 1)中国地方の調査地域は,鳥取県倉吉市,松江市,米子市,岡山県三和町・細池湿原,兵庫県作用町,姫路市である。これらの地域において土壌・古土壌断面の観察と試料採取を行い,研究室に持ち帰った試料について粒度分析を行った。このほか岡山理科大学でESR分析を,福井県立大学でX線回折を行った。年代測定は地球科学研究所,火山灰同定は京都フィッショントラック(株)に依頼した。 2)韓国西海岸では,南西端の木浦市と中部の端山で現地調査と土壌試料採取を実施し,研究室において上記と同様の分析を行った。 3)中国地方における研究の結果,中国地方に広く分布する火山灰層の間に挟まれる,いわゆる「ローム層」が火山灰の風化物ではなく,アジア大陸から飛来した風成塵起源であることを初めて明らかにし,日本列島における約30万年間の風成塵堆積変化と気候変動の関係を明らかにした。 4)韓国における調査の結果,韓国西海岸には厚いレス(黄土)が堆積しており,レスは約40万年前から現在まで継続堆積したこと,レス・古土壌の形成と気候変動との関係を明らかにした。この結果,韓国にはレスが存在しないという韓国学会の定説に修正を迫る結果を得た。 5)現在,中国地方と韓国における研究結果を相互に比較検討し,東アジアにおける古環境変動解明,モンスーン復元を行うための作業を継続している。
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