研究概要 |
研究期間の3年間に,氷期に中緯度風成塵輸送ルートの南限であった沖縄本島と,同北限であった岡山県細池湿原と鳥取県倉吉市,および同ルートの風上にあたる韓国中西部で現地調査を実施した.このほか比較研究のために北海道,福井県,中国東北部の3箇所の試料分析を行なった.研究結果は以下のようである. 1、沖縄本島では,中国内陸部のタクラマカン・ゴビ沙漠から亜熱帯ジェット気流によって中緯コースを運ばれた風成塵がMIS 10以降に継続して堆積し,赤黄色土の母材になった. 2、細池湿原では氷期中の亜間氷期に夏季モンスーンが優勢になり,降水量が増加して流水物質が堆積し,寒冷期にはアジア北方地域から運ばれた風成塵が堆積した.MIS 1になると中国内陸沙漠から中緯度コースを運ばれた風成塵が堆積するようになった.すなわち氷期にはポーラーフロントが中国山地にあり,間氷期には北上した. 3、倉吉市では火山灰層に挟まれたローム層が過去30万年間にわたって堆積している.同層に含まれる多量のシルト画分石英は,氷期にはアジア北方地域から,間氷期には中緯度ルートを運ばれた風成塵からなる. 4、韓国中西部にはMIS 11以降のレス-古土壌が連続的に堆積している.レスは氷期においてアジア北方地域から運ばれたのものと,陸化した黄海海底から吹き上げられた風成塵が混合したものである. 5、北海道,福井県,中国東北部のレスはESR酸素空孔量が高く,いずれもアジア北方地域から運ばれた風成塵からなる.中国東北部では14世紀以降に農地開発が進められた結果,風成麈が増加するようになった.
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