研究概要 |
本研究の目的は,日本と韓国それぞれで社会問題化した大規模干拓事業を取り上げ,それをめぐり展開される環境論争を分析し,それぞれの国において,いかに環境問題が構築されるか,その際にいかなる利害関係,地域的背景があるのかを明らかにすることである。3か年調査の中間年であり,昨年度調査の結果をふまえて各研究分担者が各課題に応じた現地調査を行った。加えて,日本地理学会の秋季学術大会でシンポジウムを開催し,調査結果の中間報告を行うとともに,韓国や国内の環境問題に関わりのある研究者による情報交換や議論の深化を図った。 1 韓国での現地調査を8月下旬に行い,韓国環境運動連合の本部(ソウル)での聞き取りをはじめ,昨年に引き続きケファ地区の運動家や地区住民,ならびに昨年訪れていない全羅北道庁の関係部署と郡山市で活動する自然保護団体を対象とする聞き取り調査を行った。同時に,報告書類や行政資料等の収集も行った。これらを通じて,セマングム問題への地域による関わりの差や主張の違い・姿勢の違い等が前年以上に明らかになるとともに,それを裏付ける資料等を入手することができた。特に新興工業地域である郡山市と全羅北道との関係,事業推進運動の中心地での反対派組織について,戦略や現場との関係・ソウルとの関係などに独特の特徴を有することが確認できた。 2 9月末に日本地理学会の秋季大会で本研究タイトルを冠したシンポジウムを開催し,韓国や諫早等の関係者を招いてディスカッションを行った。本研究の課題の一つである環境問題論争の構築課程や,そこでの科学者の役割・科学的データの使われ方等について活発な議論が交わされた。今後の分析や考察のための貴重な情報を得ることができた。 3 国内調査として,本年度は自然再生事業を進めるに際し,行政と市民との協議が模索されている霞ヶ浦(茨城県)の現地見学と関係者ヒアリングを年度末に行った。
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