研究概要 |
本研究の目的は,日本と韓国の社会問題化した大規模干拓事業を取り上げ,それをめぐり展開される環境問題論争を分析し,それぞれの国において,いかに問題が構築されるのか,その際にいかなる利害関係,地域的背景があるのかを明らかにすることである。3か年調査の最終年であり,これまでの調査を踏まえて,追加的な調査を行い,その結果を取りまとめるとともに全体を総括した。 1.韓国での現地調査を8月末から9月初めにかけて行い,韓国環境運動連合の本部での聞き取り(韓国の環境団体の組織運営について,及びセマングムの現状)をはじめ,セマングム周辺地域での住民・関係者ヒアリング,流域住民アンケート等を行った。これらにより前年までの調査で疑問となっていた韓国環境団体の組織運営と日本のそれを比較しうる情報を入手することができ,また,流域住民アンケート調査からは,事業推進一色と考えられがちな全羅北道住民の事業認識の仕方は一様ではなく,保全VS.開発の単純な二項対立でとらえるべきでないこと等が明らかになった。 2.国内では3月末に中海・宍道湖の現地調査を兼ねた,研究総括のための研究会をもうけ,これまでの成果をふり返って,今後の研究課題についての議論を行った。今後ともセマングム問題をフォローしていくとともに,視野を日韓にとどめず,中国やベトナムなどを含めた東アジアという広域的なくくりからとらえ直してみる必要性があることを確認した。
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