研究概要 |
1.野外調査によって,以下のような中期更新世以降のテフラ試料の収集を行った. 1)前年度採取したトカラ列島のテフラについて,遠方での対比テフラを求めるために,周辺の島々でテフラ収集を行った.特に,トカラ列島のテフラの飛散が期待される種子島において,テフラ層序をよく保つ考古遺跡露頭でテフラを採取した.ここでは,既知のテフラ対比の再検討に加え,未対比のテフラを検出した.対比を正確にするために,ユニットごとのサンプリングを行った.2)南西諸島の与論島から種子島までの島々において,自然露頭や遣跡発掘で見いだされた完新世漂着軽石を採取した.それらは弥生期ごろのもので,同定に期待のもてるテフラである.3)薩摩半島において未同定のテフラを採取した.特に考古遺跡編年・沖積低地編年と関係して,分布・給源・対比が不明であったテフラを火山周辺の大野岳・開聞岳山麓から遠方の薩摩半島中部地域に追跡した.4)巨大カルデラ周辺において,中期更新世のテフラを採取した.注目したのは,広域分布の可能性のある小瀬田火砕流である.すでに試料のある模式地の屋久島に加えて,種子島でサンプルを採取した.さらに太平洋海域で報告されている海底テフラの化学組成を検討し,小瀬田火砕流に対比可能なテフラを見いだし,その試料収集を行った.5)その他,地形発達,古環境変遷,考古遺跡の編年にとって重要なテフラの採取を行った.主なものは次の通りである.(1)川内平野,甲突川平野,万之瀬川平野の各臨海平野で収集した試錐コアに介在するテフラ,(2)発掘中の考古遺跡で見いだされたテフラ,(3)姶良カルデラ周辺域における旧海水準と関わった完新世・後期更新世・中期更新世テフラ. 2.採取したテフラを洗浄し,鉱物を抽出した.さらに磁石を使って,化学分析で使用する火山ガラスと磁鉄鉱を抽出した.完新世・後期更新世の標準テフラ試料についてはほぼこの過程を終えた.未知の試料と,中期更新世の標準試料・未知の試料については,その抽出を一部終了した.
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