研究概要 |
1)トカラ列島のテフラ層序を確立した.この中で,外来広域テフラ-K-Ah, AT-を同定し,後期更新世後半から完新世においてのテフラ編年の枠組みをほぼ確立することができた. 2)国分平野の沖積層の60mボーリングコアから検出した3枚の完新世テフラの同定を行った結果,最下位のテフラがSz-S(1.1万年前),中位がSz-Tk3(9400年前),上位K-Ah(6500年前)であることがわかった.これらに挟まれる海成沖積層が全体的に干潟付近の環境を示すことから,試錐地点付近は,堆積物供給量が多く,完新世の海面上昇を通じて,常に海面付近の環境が維持されてきたことがわかった. 3)古環境と文化編年との対比のため,大隈半島中部で発掘されている考古遺跡中において完新世テフラ調査を行い,テフラと土器編年との関係を明らかにした.また,給源・分布の不確かな後期更新世末のテフラ群について,テフラ採取と分布調査を行った. 4)入戸火砕流台地面でよく認められる埋積浅谷の埋積土中のテフラ同定を行い,埋積浅谷の形成時期と埋積過程を明らかにした.埋積土基底には桜島の最初の爆発的噴火による噴出物であるSz-Tk6がよく認められることから,埋積浅谷が火砕流台地形成直後に形成され,以後埋積が一方的に進行したことが明らかになった.埋積浅谷は一般的にアカホヤ火山灰のころにはほぼ平坦化されている. 5)薩摩半島南部で後期更新世と完新世のテフラの分布調査と試料採取を行った.ここでは給源の不確かな後期更新世種子1・2テフラ,縄文晩期入佐土器の指標テフラであるKm4テフラの層序と分布を追跡した. 6)中期更新世中期頃の広域テフラにかかわる調査を行った.ここでは広域テフラを飛散させた可能性のある火砕流・ガラス質降下火山灰の分布・層位調査と試料採取を鹿児島北部地域で行った, 7)種子島の重要な遺跡である広田遺跡において見いだされた漂着テフラの採取を行った. 8)以上の試料採取したテフラについて,室内で洗浄を行い,分析のための火山ガラスを抽出した. 9)屋久島の中期更新世テフラについて得られた化学分析とガラスフィッショントラック年代の結果をカナダで行われたテフラに関する国際会議で発表した.
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