研究概要 |
本研究では,環境条件の同質的な空間領域をエコトープとし,それがモザイクした地図をエコマップという.研究の目的は,都市における様々なエコトープの環境特性が都市の表面温度の空間構造の形成にどのような影響を与えているかを明らかにすることである.そのために,同じ温度分布を示す空間領域をクリマトープ,それがモザイクした地図をクリママップという. 今年度はエコトープの区分とエコマップの作成,クリマトープの区分とクリママップの作成に着目し,横浜市を対象に,研究を進めた.エコマップの作成に関しては,地域の規模と必要な精度に応じて,衛星画像データ,地図データ,フィールドデータを利用したマルチスケールの手法を導入し,都市エコマップ,地区エコマップ,街区エコマップを作成した.ASTERという中解像度の衛星画像で作った土地被覆分類図を都市規模のエコマップとした.都市計画基本図に相当する精度の地図を重ね合わせて,地区レベルのエコマップを作成した.高解像度の衛星画像や空中写真とフィールド調査によって,街区レベルのエコマップを作成した.都市レベルでは5種類のエコトープ,地区レベルでは20種類のエコトープ,街区レベルでは異なる地表被覆をもつすべてのパッチをエコトープとして区分した.ランドサットTMからの表面温度とASTERからのNDVIで地区レベルのエコトープの区分の有意性を検証し,良好な結果を得た. 一方,ランドサットTMの表面温度データに対して,積算フィルタで平滑化処理を行い,クリマトープに一定の空間的連担性を持たせた.その結果,積算温度については300m以上400m未満のフィルタサイズにおいて,高温域の連担性と低温域の分布との両者を明確に把握できることがわかった.300〜400mという積算温度フィルタの大きさは都市地域におけるクリマトープの空間スケールの特質を示唆していることが考えられる.その形成に地域のエコトープの規模や特性や空間構造が影響していると見られる.次年度ではエコトープとクリマトープを空間分布,空間構造,統計関係の側面から検証し,所期の目標を達成させることができる.
|