今年度は長野市街地における山風の実態および山風が都市ヒートアイアンドに及ぼす影響を把握するため、以下のような観測を実施した。 (1)山風吹走地点把握のための風分布観測 長野市街地の屋上9地点において、風向風速および気温の定点観測を昨年度に引き続き実施した。その解析結果から山風の吹走範囲について把握を試みた。山風の吹走範囲は、裾花川谷口から吹走方向に約3km風下側の地点まで確認できた。また、直交方向には裾花川谷口から約2km風下側の地点において幅約2kmにわたり確認できた。そのほか、吹走方向では風上側ほど山風の開始時刻が早く、逆に終了時刻が遅かった。一方、直交方向では大きな違いはみられなかった。風速は風下にいくほど弱く、また風の軸から離れた方が弱かった。 (2)山風吹走時における地上気象要素の時間変化 山風が地上気象要素に及ぼす影響を把握するため、山風吹走地点および非吹走地点において、風、気温、温度などの気象観測を夏季(8月24日〜26日)に実施した。今回は天候に恵まれず、観測期間中は明瞭な山風は出現しなかったため、解析に充分なデータは取得できなかった。 (3)ヘリコプターによる地表面温度分布および気温鉛直分布観測ほか 裾花川上流の山地斜面で形成された冷気がどのように市街地へ到達するかを検討するための数値シミュレーションを行い、長野市への冷気の供給パターンが描き出され、典型日の地上風系との比較が行われた。加えて、ヘリコプターやASTER衛星による高解像度地表面温度分布データの取得により、系統的に低温のゾーンと山風吹送城との関係の検討が行われたほか、早期における吹送城内外での気温の鉛直プロファイルの相違(地上470m以下で顕著)より、山風による冷却効果の定量化を行った。
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