研究概要 |
既存ボーリング資料を基に広域火山灰・姶良Tnテフラの深度分布を検討するとともに,琵琶湖南東方の沿岸環境を示す3箇所の遺跡でボーリング掘削を行いコア試料を採取した. 既存ボーリング資料の検討から,姶良Tnテフラの埋没深度は琵琶湖西岸で30〜35m、東岸では10〜25mと西岸の方がより深いこと,東岸では系統的に西(湖寄り)に向かって深くなる傾向があり近江盆地全体として西に傾動するパターンを示すこと,が明らかになった.このような深度分布は,基本的に後期更新世以降の地殻変動によるものと考えられる. ボーリングは守山市三宅町,同赤野井浜遺跡および安土町竜ヶ崎A遺跡において行い,それぞれ長さ5〜7mの連続コア試料を得た. このうち竜ヶ崎A遺跡ではコア試料と遺物に随伴する試料の年代測定を行い,地表から深度1.3m付近までの連続した腐植質泥層から約3000〜4000年前の年代値が,深度約2〜6.3m(姶良Tnテフラ挟在層準)までの泥および砂層から約130000〜24000年前の年代値が得られた.これらの年代値は,当地において完新世前期に堆積間隙が生じていること,その完新世中期に内湖が形成され,特に内湖形成初期に泥質堆積物が急速に堆積したこと,を示す. また,赤野井浜遺跡においては深度5.7mより鬼界アカホヤテフラが得られ,ボーリング地点から約1km離れた湖底遺跡(赤野井湾遺跡)と同一標高に等時間面を設定することができた.
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