研究概要 |
北太平洋海洋科学機関(North Pacific Marine Science Organization, PICES)で作成された海洋生態系モデル(NEMURO)に炭酸系などの海洋物質循環を結合させた。さらに海洋1次元モデルおよび北太平洋における亜寒帯から亜熱帯を含む3次元モデルなどの海洋循環モデルにそれらを組み込んだ。西部北太平洋亜寒帯においては、強い珪藻春季ブルームやそれに続く小型プランクトンブルームなどを再現し、海洋表層における栄養塩濃度や二酸化炭素分圧の季節変動も再現することが出来た。海洋生態系がどのように海洋物質循環を規定しているかの議論を行い、論文化した。また、成長に伴って季節的に鉛直移住するカイアシ類が亜寒帯の海洋生態系に対する影響をどのように与えるかを議論し、論文化した。深さ1000mにおけるカイアシ類の季節鉛直移住に伴う炭素輸送量は、沈降粒子の下方への輸送量の約1割程度となり次期海洋炭素循環モデルを作成する際には何らかの形で組み込んだ方が良いことが示唆された。 次に亜寒帯と亜熱帯における生態系の比較を行った。その結果、亜寒帯において観測された生理パラメータを用いると亜熱帯における生態系が再現出来ず、また逆の場合も同様であり、論文として発表した。個々の海域における動植物プランクトンのグループを陽に表現したモデルを作成し、それぞれの海域に適用した。その結果、それぞれの海域で最も優先となる動植物プランクトンのグループによる棲み分けを再現した。これらを本計画の申請時の予定に従い、来年度3次元モデルに組み込む予定である。
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