研究概要 |
植物プランクトンと動物プランクトンにそれぞれ亜寒帯グループと亜熱帯グループを陽に表現した海洋生態系モデル(動植物プランクトン9グループ)を用いて、生態系の振る舞いを再現した。海水温の季節変化は、特定の地点における両グループの共生をもたらしており、別の見方をすれば一つのグループが季節変化を利用してより広い海域に適応できる。また、日本近海の代表的な観測2点(亜寒帯海域A7,および亜熱帯海域B1)において、観測と比較検討の結果、植物プランクトンや動物プランクトンのグループ別の観測された生物量の季節変化を再現することがわかった。 1948年から2002年までの経年変動を与えた全球3次元生態系モデルの結果は、観測から知られている1970年代の気候シフトを再現した。経年変動に伴って小型植物プランクトンと大型植物プランクトンのグループ交替が見られ、二酸化炭素交換フラックス変動も再現された。 地域3次元生態系モデル(動植物プランクトン5グループ)の結果より、亜熱帯海域では光合成の栄養塩依存性が植物プランクトンの優占グループを決定しているのに対し、亜寒帯では、動物プランクトン特にカイアシ類の捕食嗜好性が植物プランクトンの優占グループを決定していることが分かった。さらに、東大気候センターと国立環境研が行った温暖化実験の数値計算結果を利用することにより、このモデルを今世紀末の地球温暖化の状況の元で、どのような影響が現れるかを見てみた。その結果、温暖化の影響は全海洋で一様に起こるのではなく、亜熱帯海域と亜寒帯海域の中間海域である混乱水域において、顕著に表れることが示された。特に、春季ブルームの後半、小型浮魚類が成長する頃に、温暖化に伴って、生物生産の減少や、植物プランクトンの優占グループの小型化が起こることが示された。この結果より、地球温暖化に伴い、水産資源が激減することが想像される。
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