研究概要 |
本研究の目的は河川水と海水中の低分子カルボニル化合物の定量と動態の解明とその光化学的生成機構の解明である。まず本年度は、従来からの2,4-DNPHによる誘導体化による方法をバッチ式で行い、グラジエントHPLCシステムを用い河川水中のアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトンなどのカルボニル化合物の分析定量を行った。本法での検出限界はアセトアルデヒドで0.02μM、ホルムアルデヒドで0.04μM、アセトンで0.05μMであった。1.0μM添加回収実験での回収率は91〜110%であった。広島県東広島市周辺を流域に持つ黒瀬川や広島市を流れる太田川の河川水ではアセトアルデヒドで検出限界〜0.4μM、ホルムアルデヒドで検出限界〜0.4μM、アセトンで0.1〜0.7μM程度であった。ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドについては検出限界以下の試料があり、現在の装置では感度が不十分である場合があることがわかった。一方、ため池水での濃度はアセトンやアセトアルデヒドの濃度が高く、両者とも0.3〜0.7μM程度であった。河川水を採取し疑似太陽光を光照射したところ、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの濃度は光照射時間とともに増加した。黒瀬川の場合、清浄な源流部では光照射による増加率は低いが、東広島市内の汚染された地区の河川水では大きな増加率を示した。これに対してアセトンでは光照射による増加は明瞭ではなかった。またホルムアルデヒドでは光化学的分解も見られた。今年度の研究から現状のシステムは河川水試料の一部で感度が十分でない場合があることがわかった。河川水中でのホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの光化学的生成量は0.01〜0.05μM/h程度であり河川水中の濃度と同じ程度である。従って次年度は徹底したクリーン技術と前濃縮法を組み合わせた方法を新たに開発し高感度化するとともに、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの光化学的生成過程・分解過程を明らかにしていく予定である。
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