昨年度までに開発した低分子カルボニル化合物の超高感度オンライン濃縮HPLCシステムを用いて、本年度(17年度)は河川水、海水中、ため池でのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グリオキサール、アセトンの5つのカルボニル化合物を定量し、その光化学的生成過程・分解過程などの動態を明らかにした。 河川水として広島県西部の太田川で採水した河川水中の低分子カルボニル化合物を測定したところ、これらの化合物の濃度は上流では低濃度で、下流域の広島市内ではその濃度は上昇した。大学内のため池での測定では低分子カルボニル化合物は日中濃度が上昇し、夜間に濃度が低くなることがわかった。また、瀬戸内海西部の広島湾では海水表層での濃度が高くなることがわかった。これらのフィールドでの結果を総合的に考察し、水圏での低分子カルボニル化合物の濃度には、1)水相での低分子カルボニル化合物の光化学的生成、2)気相(大気)との交換、3)生物による分解・代謝、が関わっていると考え、これらそれぞれについて個別に評価し、天然水中での動態について考察した。 その結果、ホルムアルデヒドの水圏での主な起源は大気から水相へのとけ込みと水相での光化学的反応で、生物的分解が中程度であるため、今回測定した5つのカルボニル化合物の中でもっとも高い濃度で検出されたのではないかと推測された。一方、アセトアルデヒドの起源は主に水相での光化学的反応のみで、生物的分解が速いために、水相での濃度が他のカルボニル化合物に比べ低いことがわかった。また、プロピオンアルデヒドは光化学的生成速度が小さい上に生物的分解が早いために、河川水や海水ではほとんど検出されないこと、逆に、グリオキサールは光化学的生成速度が小さいが生物的分解が著しく遅いために、天然水中での濃度はホルムアルデヒドに続いて高いことなどがわかった。
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