オーストラリア産ロブスターPanulirus cygnusを用いて、イセエビ血リンパの反復採取技術を確立し、1%及び5%CO_2混合ガスに平衡させた海水にイセエビを曝露し、生残率と酸塩基平衡動態を調べた。囲心腔後端の背甲に穴を開け、ポリエチレンカニューラを装着後、接着剤で密着させた。約48時間(h)回復させた後、CO_2曝露前及び曝露開始後72hまで血リンパの反復採取を行った。血リンパのpH、総CO_2濃度、浸透圧濃度及び無機イオン濃度を測定した。CO_2分圧(PCO_2)及びHCO_3^-濃度は計算によって求めた。統計処理は1%CO_2区のみで行った。 1%(N=5)及び5%(N=2)CO_2両区で全個体が生残した。1%CO_2区で、pHは曝露前の値7.74±0.04(±SD)から曝露1h後に7.44±0.11まで有意に低下し、24h後に7.78±0.09となった。PCO_2は曝露前0.21±0.05kPaから曝露3h後に1.40±0.27まで有意に上昇した。HCO_3^-濃度は曝露48h後に曝露前(3.8±0.9mM)の約8倍(31.1±4.1)にまで有意に増加した。浸透圧濃度及び無機イオン濃度は変化しなかった。5%CO_2区では、1%CO_2区と比較してpHの低下幅とPCO_2の上昇幅は増大したものの、HCO_3^-濃度の到達濃度は同程度であったため、pHの回復は不完全であった。 マダコOctopus vulgarisを用いて、血液の反復採取技術の確立を試みたが、触腕がカニューラに到達しないようにするためには過度の拘束を加える必要があり、現在までのところ技術開発には至っていない。
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