研究課題
基盤研究(C)
兵庫県内の水生生物に関する報告書、および地域に死蔵されている兵庫県内の分布情報を地理情報システム(GIS)を用いてデータベース化した。この水生生物の分布データと既存の各種環境情報を重ね合せて解析し、魚類、底生動物、水生植物といった淡水生物の、最も正答率の高い生息適地モデルを検討した。兵庫県のみならず、日本全国の河川において河川改修が広範に実施された結果、河川から堆積環境が消失した。その多くが絶滅危惧種にランクアップされている、タナゴ類にまず注目し、堆積環境と流水環境の変節点に特異的に生息し、またタナゴ類の産卵基質である二枚貝の生息適地モデル構築にまず取り組んだ。兵庫県の武庫川上流域は、上流域であるにもかかわらず河川勾配が小さい、河川勾配が小さいことと相まって部分的に狭窄部が存在することで流域に滞留部すなわち堆積部が流域の各所に散在する。まさにこの地点が、これまでのデータベースの解析からイシガイ科の二枚貝の生息地であることが明らかとなった。カスミサンショウウオに関しても同様の方法でポテンシャルマップを推定し、既知の分布地とをオーバーレイすることにより、厳重に保全すべき地域また生息地を再創造すべき地域を指摘した。これらの研究成果は、既に兵庫県の河川整備計画に取り入れられ実施段階に既に移行しつつあり、社会還元が同時に進行している。絶滅危惧種である二枚貝、タナゴ類、スナヤツメなどが生息する堆積環境は、同時に河川が氾濫し洪水が頻発する部分であり、河川改修が既に計画され試験施工が始まっている。GISを用いた流域スケールでは堆積環境であっても、河川改修の結果一時的に流水環境が卓越し、その変化に即座に淡水魚が応答することも明らかにした。なお、得られた稀少水生生物と外来生物オオクチバスのデータベースを重ね、外来種対策が緊急に必要な区域を明らかにした。今後の河川を主にした環境保全・創造に明確な指針を提供した。
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武庫川上流の人と自然(人と自然の博物館総合共同研究報告書)
ページ: 40-43
ページ: 62-67
国立環境研究所報告 第183号
ページ: 12-15
Report from the National Institute of Environment, Tukuba vol.183
Natural Environments and Human Activities, and their Interrelationship in the Mukogawa River Basin, Hyogo, Japan, Sanda