本研究の目的は、マイクロ波を利用する衛星計測データを解析することにより、極域における積雪物理量の変動を長期にわたり監視する方法を明らかにし、実証することである。そのため、計測方式と性能が異なる複数の衛星搭載マイクロ波センサが取得するデータを解析し、観測する衛星センサの違いによらない共通の積雪物理量を継続的に抽出推定する手法の開発を行っている。ここで利用する衛星センサはマイクロ波放射計と合成開口レーダである。研究初年度の実績を以下に概説する。 観測が予定されている高性能マイクロ波センサ(ADEOS-2のAMSRとALOSのPALSAR)のデータから、地上観測データの助けを借りずに複数の雪氷物理量を精度よく抽出する方法を検討した。ここで得られた解析手法を従来型のマイクロ波センサ(MOS-1のMSRとJERS-1のSAR)の極域観測データにも適用できるように改めた。 つぎに、地上観測データが存在する北海道を観測したMSRデータを解析して有効性や限界を確かめ、アルゴリズムを改良した。現在は、地上観測データの無い極域を観測したMSRデータを解析している。北海道の観測データの解析では、輝度温度として得られるMSRデータから、積雪表面における放射率を推定する方法を明らかにしたことも成果の一つである。 PALSAR等のL-band SARについての検討では、データに含まれる位相情報と振幅情報を利用して、深さ、密度、含水率を推定する解析アルゴリズムを開発した。これを、平成16年2月に北海道で実施されたPi-SAR航空機検証実験で取得される観測データに適用し、有効性を実証する予定である。
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