研究概要 |
平成16年度は、9〜10月に実施された地球観測船「みらい」による北極海調査(JWACS2004)に参加し、カナダ側研究者との協力のもとプランクトンを中心とする低次生態系の水平・鉛直分布と海洋環境との関わりについて調査した。動物プランクトンに関しては北極海全体で最も優先するカイアシ類2種、Calanus hyperboreusとC.glacialisをターゲットとし、現存量に加えて成長段階組成の海域差を調べた。その結果、西経160度付近に位置するChukuchi Plateauをはさんで東西で生物生産の量・時期に顕著な違いがあることがわかった。西側では、最大クロロフィル深度が浅く、水柱クロロフィル量が多く、珪藻と推測される大型植物プランクトンが卓越しており、活発な基礎生産が起こっていることを示唆していたが、東側では逆にポストブルーム的な状況を呈していた。Calanus 2種の成長は、西側海域でコペポダイト1期分進んでおり、東側では若年固体が多いのに関わらず中層で休眠準備に入ったと見られる固体が見られた。このことから、東側海域では乏しい餌条件のために1シーズン中のCalanusの成長が遅く、通常より長い3年サイクルの生活史戦略をとっていることが示唆された。物理・化学データから見ると、西側海域表層には東シベリア起源と思われる栄養塩豊かな水が流れ込んでおり、それが生物生産の量的・時期的な東西海域差の要因であると考えられた。以上の結果については,「みらいシンポジウム」(平成17年1月横浜)において発表済、またR/V Mirai Cruise Report MR04-05に掲載予定である。
|