研究概要 |
全国散居村連絡協議会に参加する3町(北海道栗沢町,岩手県胆沢町,島根県斐川町)を主体に,次の事柄について調査した。 1.栗沢町砺波地区において,屋敷林を持つ4世帯を対象に統一したフォーマットによる聞き取り調査をおこなった。その結果,この地域の住人は富山県砺波地域からの入植者で,出身地の散居や屋敷形態を導入し,屋敷林も仕立てていることを把握した。現在,二・三代目となり,散居形態は変化していないが,高齢化・核家族化による屋敷林の存続は厳しい状況である点を把握した。 2.胆沢町小山地区と斐川町4地区において,当地区を代表する屋敷の状況(家屋の配置,屋敷林構成樹木の種類・位置・サイズ,水回りなど)を詳細に測量し,平面図を作成した。さらに個々の家屋や樹木の由来、使用・植栽の目的,管理方法などについて聞き取り調査をおこない,屋敷林の成立・維持にかかわる情報を収集した。 3.胆沢町3地区において,(1)散居や屋敷林が地域資源となるか,(2)屋敷林に対する意識,(3)維持する上での問題点,(4)世代間の意識の差異,(5)維持管理を目的とした施策などについて,1500世帯に対してアンケート調査をおこなった。地区により屋敷林の存在様式や意識,価値観は異なっているが,維持する上での問題点は共通していることがわかった。 4.これらの基礎調査や既存の調査結果,文献情報に基づき環境学習プログラム(教材を含む)や展示ポスターを作成した。胆沢町役場とNPO組織と連携しながら,屋敷林を素材とする環境学習実践と展示活動をそれぞれ2回実施した。いずれも新聞紙上で取り上げられるなどして,屋敷林の保存と利用にかかわる住民・行政の意識高揚に寄与することができた。
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