研究概要 |
全国散居村連絡協議会に参加する6市町(北海道栗沢町,岩手県胆沢町,山形県飯豊町,富山県砺波市,静岡県大井川町,島根県斐川町)において,次の事柄について調査を行った. 1.砺波市にて行われた「全国散居村サミット」に参加し,それぞれの自治体がおかれている現状や将来ビジョンに関して把握した.さらに散居村の持つ共通の問題点や環境資源となりうる事項の有無などを調査した. 2.屋敷林を持つ世帯を対象として聞き取り調査を行った結果,高齢化や核家族化によって屋敷林の存在が危険な状態にあることを把握した. 3.屋敷内の平面図を作成するとともに植物社会学的植生調査や植物相調査を行った.その結果,植栽された樹木は全国的に共通する種が多いこと,それ以外の樹木は植生帯の違いによる異なる種であることが明らかとなった. 4.環境学習プログラムを作成し,胆沢町役場とNPO組織と連携し,屋敷林を題材とする環境学習実践と展示活動を実施した.その結果,屋敷林の保存と利用にかかわる住民と行政の意識高揚に寄与した.さらに継続的な活動を行うためのプログラムを作成した. 5.胆沢町において,散居や屋敷林に関するアンケート調査を1500世帯を対象に行った.回収された資料から,全域で現在の屋敷林を維持させることを望む声が最も多かった.しかし,屋敷周囲に影響を及ぼす落葉や枝,病害虫の発生などといった様々な問題点も指摘された,これらに対して,補助金などの公的資金の導入を希望する世帯が約7割と多かったが,それに反対する意見もあり,検討を要する事項といえた.さらに学習の機会などを設け,所有者の自助努力も必要といえるが,規制をしてまでも屋敷林を残すことに対しての反対の意見も多かった.
|