研究概要 |
本研究では,これまで十分な研究が行われてこなかった国内地域レベルでの二酸化炭素排出構造を地域間産業連関表と二酸化炭素排出原単位を用いて分析し,京都議定書で取り決められた二酸化炭素排出削減を国内各地域で達成していく際の地域経済の課題を検討することを目的とする。以下に本年度の研究成果を要約する。 (1)地域経済の長期的推移と二酸化炭素排出構造に関する分析 1975年〜95年の全国9地域別の地域産業連関表データと部門別の二酸化炭素排出原単位データを用いて,地域経済の変動と二酸化炭素排出構造の関係を実証的に分析した。ここでは,地域産業連関モデルの特長を利用して,地域経済成長の変動要因と二酸化炭素排出の変動要因を,投入係数(生産技術),地域内最終需要,輸出,移出,輸入依存度(輸入代替),移入依存度(移入代替)の各要因に分解し,地域経済と二酸化炭素排出構造の関連を変動要因に遡って分析した。 (2)二酸化炭素排出の地域間依存構造の分析 各地域における経済活動に伴う二酸化炭素排出は,移輸出と移輸入を通じて,国内の他地域及び国外に転嫁されるが,その構造は,全国8地域間の産業連関表データを用いて,地域間別・部門別に詳細に把握することができる。ここでは,(1)の分析によって得られた各要因を,地域間産業連関分析のフレームに基づいてさらに詳細に分析し,移出,移入,輸出,輸入のそれぞれが各地域の二酸化炭素排出の増減に及ぼす影響を検討した。 以上の研究結果から,わが国における二酸化炭素排出構造はバブル経済期に急増しており,地域内消費需要が大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。また,国内では移出入に起因する二酸化炭素排出量も大きいことから,今後の排出削減策では,地域間産業連関表による分析が必要性であることも明らかになった。
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