天竜川(静岡県)、飛騨川(岐阜県)、球磨川(熊本県)を研究対象の河川として選び、ダムの運用に伴う環境変化と生物群集の特徴を調査した。 天竜川・船明ダムの下流の付着藻類量は、対照としたダムを欠く河川と異なり、夏季に最大値が記録された。付着群集の種類組成及びダム放水量実績から、藻類皮膜の剥離が抑制されるためであると考えた。水棲昆虫群集では、粒子状懸濁物食者及び潜堀型の生活をする種の比率が高いことが明らかになった。前者はダムで発生したプランクトンの流出、後者はダム下流の河床のシルト化に関連があるものと考えられる。 飛騨川、球磨川では、いくつかのダムの下流で、水温の終日観測を実施し、ダム放水による水温日変動のパターンを整理した。 河川の一次生産測定は、現場の酸素濃度の日変化に基づく推定法を適用してみたが、一次生産者の現存量がごく少ない渓流では、生産の規模は小さく、酸素濃度の変化として有意な日較差を認めることはできなかった。次年度に、新たな現場測定法で再度生産速度の推定を行う。 球磨川水系での調査の過程で、絶滅危惧種とされている淡水紅藻類3種(オキチモズク、チスジノリ、カワモズク属の一種)の生息を確認した。いずれも暖水を好む種であり、冬季も水温が著しく低下することのない湧水で涵養される河川に見られることが多い。球磨川での発生とダムによる冬季の水温上昇と関連付けて、次年度にも調査を行う。
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