環境破壊があったとき、地域住民はどのようにそれに抵抗し、あるいは受容するのかを地域研究的実態調査を実施した。具体的には、沖縄県北谷町砂辺地区をフィールドとして、嘉手納飛行場を離着陸する航空機の激甚な騒音による音環境の破壊に対して地域住民の受容と抵抗の実態をコミュニティライフヒストリ調査法によって明らかにせんとしつつある。航空機騒音の影響に関する疫学調査はすでに終えているので、これに加えて地域住民(複数)の生活史が有効な解析データとなる。さらに地域の郷土史資料を渉猟し、地域住民のライフヒストリを聞き取っているところである。一方、成田空港において暫定滑走路が新たに供用されたので、それによる騒音曝露の影響調査を実施し、環境破壊が始まったときの地域住民の反応を得た。さらに成田闘争に関与した農民のライフヒストリを聞き取り、地域闘争と農民の生活史との関連を明らかにしつつある。今後これらの地域研究結果を解析して、住民の環境破壊に対する受容の様相と抵抗のあり方を考究していく。また従来の航空機騒音に対する裁判闘争の経緯を調査し、司法の場における、航空機騒音による環境破壊に対する議論と裁判所の判断を調べた。これは環境破壊に対する抵抗運動として現代の日本ではもっとも激しいもののひとつと位置づけることができる。これまでの研究成果は、日本音響学会、日本衛生学会、国際騒音制御工学会などの国内外の学会で発表した。
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