研究概要 |
我々は生体皮膚に対するUVBの突然変異誘発能の研究の中で、ある一定以上のUVB線量では表皮において突然変異誘発が強く抑えられることを発見した。本研究では、この皮膚表皮に備わるUVB突然変異誘発の抑制応答のメカニズムを解明することを研究目的としている。この変異誘発抑制応答の機序として、表皮細胞のapoptosisや炎症性免疫といった組織レベルの選択排除の機構によって一定以上の突然変異またはDNA損傷を受けた細胞が選択的に排除されるような反応を想定して研究を行い、以下の結果を得た。 1.マウス皮膚におけるUVB照射後のapoptosisの出現の有無を、変異誘発抑制応答の見られる線量域500-1000J/m^2で、皮膚組織切片を作成して経時的に観察を試みたが、方法論的にうまく行っておらず明確な結果を得るには至らなかった。 2.皮膚表皮におけるUVB突然変異誘発の抑制応答が最大どの程度のUVB線量まで観察されるか、これまでより更に高い3,4,5kJ/ m^2の線量を突然変異検出用トランスジェニックマウスMutaに照射して検討したが、2kJ/ m^2以上では誘発突然変異頻度のデータのばらつきが大きくなり結論を得られなかった。 3.apoptosisに欠損があるとUVBに対する変異誘発抑制応答が見られなくなるかどうか調べるために、遺伝学的アプローチとしてapoptosis能に異常のあるp53欠損マウスをMutaマウスと交配し、p53欠損Mutaマウスを作成した。現在UVB照射実験を行ったところである。
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