研究概要 |
本年度は,A)我々がすでに分離同定した二種の酵母酸化損傷ヌクレオチド浄化酵素の機能解析とマウス・ヒトホモログの分離・同定を試みる,B)酵母の脱アミノ損傷ヌクレオチドの浄化酵素の分離と機能解析を行った。 A)すでに8-oxodGTPに対する分解活性を確認済みのSC151cのアミノ酸配列をもとにマウスcDNAデータベースから比較的相同性の高い候補2種を検索し,cDNAライブラリを鋳型にPCRにより増幅し,大腸菌発現ベクターにクローニングした。それらを大腸菌mutT欠損株で発現させ,mutT欠損株のmutator phenotypeを指標に相補性の有無を検討したが,いずれも相補性は示さなかった。またそれらの産物をGST融合タンパク質として精製し,8-oxodGTPに対する分解活性を測定したが,認められず,少なくとも2種のホモログ候補については,酸化損傷ヌクレオチドに対する浄化能はないと結論した。 B)脱アミノ損傷ヌクレオチド浄化酵素ITPaseとしてのその機能が示唆されている大腸菌EC197のアミノ酸配列を基に酵母のデータベースより酵母ITPase候補を検索し,ゲノムDNAを鋳型にPCRにより増幅し,大腸菌発現ベクターにクローニングした。それを大腸菌内で,大量発現させ,GST融合タンパク質として分離・精製を行った。HPLCを用い,その候補遺伝子産物の,脱アミノ化ヌクレオチドであるdITPに対する分解活性を測定した結果,pyrophosphatase活性を示した。そのspecific activityは10μ-1 sec-1と既に報告されているヒトやメタン菌のITPaseのそれぞれ10倍,20倍と高いものであった。 今後,A)まだ機能が完全に解明されていないもう一つの酵母酸化損傷ヌクレオチド浄化酵素候補の機能解析を進めるとともに,B)酵母のITPase破壊株を作成し,ITPaseの自然突然変異抑制における役割を明らかにする予定である。
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