研究概要 |
1.GC/MSとLC/MS/MSを用いて比較的極性の低い成分から高極性の成分まで広い範囲に渡る医薬品起源化学物質を対象とした分析方法を確立した。GC/MS測定成分として、解熱鎮痛剤のAspirin、Ibuprofen、Fenoprofen、Naproxen、Mefenamic acid、Ketoprofen、Ethenzamide、Propyphenazone、殺菌剤に用いられるTriclosan、Thymol、鎮痒剤のCrotamiton、酸化防止剤・医薬品原料のp-Hydroxybiphenyl、抗てんかん薬のCarbamazepineを対象とした。LC/MS/MS測定成分として、不整脈用剤のMetoprolol, Propranolol, Atenolol, Sotalol, Pondolol, Disopyramid、気管支拡張薬のSulbatamol, Terbutaline, Clenbuterol、解熱鎮痛剤のPhenazone, Aminophenazon, Propyphenazone、抗悪性腫瘍薬のCyclophosphamideの13種類を対象とした。 2.東京都内の下水処理場4カ所で3ヶ月に一回の頻度で、流入水並びに二次処理放流水を採取し、医薬品起源化学物質の分析を行った。全ての下水流入水からGC/MS対象13成分が検出された。下水流入水中で最高値を示したのはAspirinで、年平均は約7300ng/Lとなった。次いで濃度が高い成分はCrotamiton, Ibuprofen, Triclosan, Diethyltoluamideであった。ほとんどの成分で処理場間、及び季節間で流入濃度に大きな差はなく、医薬品が広く年間を通して使用され、下水に流入していることが確認された。ただしAspirinが5月に、Diethyltoluamide, Triclosanは8月に高濃度で検出され、これらの医薬品の使用が特定の季節に集中するためと考えられた。二次処理放流水中で濃度が最も高かった成分はCrotamitonであり、年平均700ng/Lであった。その他の成分で年平均が100ng/L以上のものはMefenamic acid, Ketoprofen, Diethyltoluamide, Triclosanであった。下水流入水と2次処理放流水との濃度比から除去率を求めた。Aspirin, Ibuprofen, Thymolは年間を通して除去率が95%以上であった。しかしTriclosan, Naproxen, Ketoprofenなどは除去率が約50%であり、Propyphenazone, Carbamazepineについては除去が認められなかった。LC-MS対象成分の中で下水に次処理水中から有意に検出された成分はAtenololとDisopyramideの2成分であった。その他の11成分は下水処理水中での濃度は定量限界以下(50ng/L)であった。これらの結果を踏まえて2004年度は放流先の河川を対象に医薬品起源化学物質の分布と動態解明を行っていく計画である。
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