研究概要 |
本年度は河川における医薬品の分布と動態を明らかにすることを目的とした。2004年5月に東京都内の多摩川の本流6地点、支流3地点で河川水試料を採取した。また2004年11〜12月にかけて全国一級河川8河川(石狩川、北上川、信濃川、木曽川、淀川、小瀬川、土器川、本明川)で河川水試料を採取した。濾過試水を分画・精製しガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)で同定、定量した。対象物質は解熱鎮痛消炎剤:Aspirin,Ibuprofen,Fenoprofen,Naproxen,Mefenamic acid,Ketoprofen,Propyphenazone,Ethenzamide、抗てんかん剤:Carbamazepine、殺菌剤:Thymol,Triclosan、酸化防止剤・医薬品原料:p-Hydroxybiphenyl、昆虫忌避薬:Diethyltoluamide、鎮痒剤:Crotamitonである。多摩川本流では、中流域から下流域にかけての全ての地点でAspirin,Crotamiton,Naproxen,Mefenamic acid,Dietyltoluamide等多数の医薬品が数ng/L〜数百ng/Lの濃度範囲で検出された。これらの医薬品は主に下水処理放流水から供給されていると考えられた。流下方向での医薬品の濃度変動から、河川中で医薬品が除去され難いことが示唆された。多摩川の最下流点からも医薬品成分が有意に検出されたことから、河口域や東京湾への医薬品汚染の広がりが示唆された。一方、全国の8河川水中の医薬品濃度は多摩川の数分の一と低濃度であった。低濃度であったのは、その流域人口に比べて流量が多いためだと思われる。8河川中5河川では全体にAspirinの割合が高かった。これらの河川では下水処理水の影響は小さく、未処理の下水や浄化槽排水などの影響の方が大きいと考えられた。
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