研究概要 |
PCBのような微量かつ難分解性の物質の評価法として、ムラサキイガイなどの指標生物を利用した生物モニタリングが有効とされている。そこで、本研究では、瀬戸内海沿岸を対象として、海水ならびにムラサキイガイを採取して、含有するPCB濃度を測定する調査を行い、ムラサキイガイのPCB濃縮特性の把握および海水中PCB濃度測定におけるムラサキイガイの指標生物の適用に関する考察を目的とした。ムラサキイガイは現場で採取したものだけでなくカゴに入れて飼育したものも用いることでムラサキイガイの生長とPCBの濃縮特性についても検討した。 その結果、ムラサキイガイ中のPCBは、総PCB、同族体および異性体の観点からも水質の濃度や組成を良く反映し、測定の容易さから、優れた生物指標として利用できることが明らかにされた。ムラサキイガイの部位別PCB濃度では内臓部が最も高く、他の部位の2倍程度蓄積することがわかった。ムラサキイガイの貝殻の大きさによる濃縮特性への影響は考慮せずに評価しうることが明らかとなり、採取および前処理の容易さ、個体間の代表性の観点から、殻長が4.0cm前後のものを採取することが勧められる。瀬戸内海での本手法の適用性を検討した結果、瀬戸内海における広範囲の適用が可能であり、PCB濃度レベルとPCB組成を把握できることが示された。ムラサキイガイの体内PCB濃度や濃縮係数に対しては脂肪含量の影響が大きく、また、H7CBより高塩素化PCBでは分子の大きさによると考えられる取り込み阻害作用を受けていることが分かった。さらに、2,4,5位の塩素置換の構造を持つ異性体が濃縮されやすく、2,3,4,5位塩素置換の異性体はムラサキイガイ中に濃縮されにくいことが明らかになった。
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