研究概要 |
1.リン酸化H2AXに対する蛍光抗体を用いて、DNA二本鎖切断端に存在するリン酸化H2AXを特異的に検出するためのin situハイブリダイゼーション法の最適条件を確立することを試みた。SCID細胞に4Gy(SCID線維芽細胞株では殆どの細胞が死亡する線量)の^<137>Csγ線照射(Nordion Int.製、Gammcel1 40 Exactor、現有)を行い、被曝後の染色処理開始時間、低張処理時間、固定時間、固定法、スライドグラス塗抹法、蛍光染色法、それぞれの工程の最適条件を確立できた。この条件を用いることで、DNA二本鎖切断端をリン酸化H2AXの蛍光シグナルとして線量依存的に検出できることができた。 2.細胞あたりの蛍光シグナルの数(フォーカス数)もしくは、細胞あたりの蛍光シグナル強度のいずれがより線量依存性を見る上で適しているかを調べた結果、微量放射線検出の場合は蛍光シグナルの数(フォーカス数)、被曝細胞の機器による高速大量処理かつ客観的測定には、細胞あたりの蛍光シグナル強度が適していることがわかった。 3.生物線量計として使用に耐え得るための、簡便かつ客観的DNA二本鎖切断量の測定のためにフローサイトメーター(Becton Dickinson社製FACScan,現有)を利用して、リン酸化H2AX部位に結合した蛍光抗体量を蛍光シグナル強度として測定し、DNA二本鎖切断量を数値化する方法が確立できた。 4.現在、フローサイトメーターでさらなる高感度な測定を可能にするために、培養、染色等の処理工程が簡便で、放射線によるDNA切断の修復能を欠損した浮遊培養細胞株の樹立を試みている。
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