研究概要 |
近紫外光によるヒトへの傷害の機構の一つとして、内在性のニトロソプロリンから光反応により生じたNOラジカルが光過敏症や光発がんに関与している可能性が考えられる。また、N-ニトロソ基が近紫外光を吸収してNOラジカルを生成していると仮定すると、ニトロソプロリン以外の内在性ニトロソ化アミノ酸や、外来性のN-ニトロソ化合物も、近紫外光によりNOラジカルの発生源や細胞の酸化的傷害の原因となる可能性がある。 そこで、ニトロソプロリンおよびタバコ特異的ニトロサミン(NNK)などN-ニトロソ化合物とUVAとの反応によるNOラジカル反応の解析を行なった。その結果、用量依存的なNO産生並びに酸化的DNA損傷のみられること、NO産生の波長依存性は、それぞれのニトロソ化合物のUV吸収スペクトラムとよく一致することを見いだした。 さらに、ヒト培養細胞を用いて、ニトロソ化合物存在下でのUVA照射によるNO産生とDNA損傷としての小核形成を調べたところ、いずれも用量依存的に生成し、ニトロソ化合物のUV吸収スペクトラムとよく一致して生成することがわかった。また、小核形成とNO産生は相関的に増加した。また、微生物におけるニトロソ化合物の近紫外光照射による変異原性誘起とNO生成にも相関性が見られ、波長依存性も同様によく一致した。 さらに、マウス皮膚2段階発がん実験を行っている。すなわち、SENCARマウスおよびHos:HR-1ヘアレスマウスの背の毛を剃った後、Demethylbenzo(a)anthraceneでイニシエートし、その後、週2回皮膚にニトロソ化合物を塗布、近紫外光照射したマウスと、コントロールとしてニトロソプロリンのみ、近紫外光のみ、および無処理のマウスの皮膚の状況を観察中である。 また,デオキシグアノシンとN-ニトロソプロリンのリン酸緩衝液をUVA照射したときの光生成物を,液クロで解析した。その結果,N-ニトロソプロリンの減少に伴い,8-オキソグアニン生成がみられた。それとともに,新規ピークがみられたので,同定研究中である。
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