研究概要 |
ビスフェノールA(BPA)およびその塩素化体(3-ClBPA、3,3'-diClBPA、3,3'5-triClBPA)は環境中から検出され、さらに塩素化体の環境ホルモン作用がBPAより強いことが報告されている。本研究ではこれらに紫外線UVA、UVB、UVCを照射し、その生成物の生物活性と構造変化を検討した。 3-ClBPAと3,3'-diClBPAはBPAと3,3'5-triClBPAより強い細胞増殖阻害(Jurkat細胞におけるalamar Blueの代謝による吸光度変化により測定)がみられた。そこで、細胞増殖にほぼ影響がみられない濃度(0.05mM)で紫外線を照射し、その影響を検討した。4種の化合物にUVBおよびUVCを100J/cm^2照射した時、毒性は未照射より増加したが、1000J/cm^2では100J/cm^2の場合より低下した。これは紫外線照射により、まず毒性の高い物質に変化し、さらなる照射で毒性の低い物質の生成が起こったことを示した。UVA照射によりBPA,3-ClBPA、3,3'-diClBPAでは変化は観察されなかったが、3,3'5-triClBPAからは毒性の高い物質が生成した。3,3'5-triClBPAのUV吸収波長がUVAの波長に最も近いことから、3,3'5-triClBPAがUVAのエネルギーを吸収し、活性化されたためかもしれない。さらにGC/MSによる同定を、UVBまたはUVCの100J/cm^2照射により細胞毒性の増加がみられた3-ClBPAと3,3'-diClBPAについて行った。その結果、3-ClBPAからは3-OH-BPAが、3,3'-diClBPAからは3-OH,3'-ClBPAが検出された。この塩素と水酸基の置換は遊離された塩素イオンの定量からも確認された。今後はさらに詳細に構造変化と生物活性の関係や細胞毒性の機構などを検討する。
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