研究概要 |
本研究では、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノール(8-2フルオロテロマーアルコール)の体内動態の解明を試みるとともに、生体影響について評価を行った。 1.8-2フルオロテロマーアルコールの体内動態の解明 マウスに8-2フルオロテロマーアルコールを経口投与し、経時的に血液、尿、糞および胃腸内容物を採取し、GC-MSを用いて8-2フルオロテロマーアルコールの定量を行った。投与した8-2フルオロテロマーアルコールは投与後数時間以内に残留し、その後次第に腸へと移行し、最終的に糞中には投与量の50%以上が未変化体として検出された。しかしながら、血液および臓器中からは8-2フルオロテロマーアルコールはわずかしか検出されなかった。したがって8-2フルオロテロマーアルコールはペルフルオロオクタン酸と異なり消化管から吸収されにくいことが明らかとなった。マウスに8-2フルオロテロマーアルコールを投与すると、血液中に一過的に構造未同定のカルボン酸体が出現し、やや遅れてPFOAが増加することが明らかとなった。また、PFOAは肝臓中にも経時的な蓄積が認められた。 2.長期摂取によるPFOAの蓄積と生体への影響 マウスに8-2フルオロテロマーアルコールを長期に摂取させた場合、8-2フルオロテロマーアルコールは血液中および肝臓からほとんど検出されなかったが、PFOAは摂取量と摂取機関に依存して蓄積していた。肝臓では、PFOAの増加に伴って、PFOA摂取時に認められるようにペルオキシソームが著しく増加した。また、肝臓中のオレイン酸合成酵素が誘導され、オレイン酸の増加が認められた。一方、血清中のトリグリセリド濃度の低下が認められた。以上の結果より、8-2フルオロテロマーアルコールを長期間摂取することによって、8-2フルオロテロマーアルコールが代謝されて生じたPFOAが肝臓や血清中に次第に蓄積してくることが明らかとなった。 3.8-2フルオロテロマーアルコールによるオレイン酸増加のメカニズム 8-2フルオロテロマーアルコールを摂取すると、肝臓のオレイン酸合成酵素であるステアロイルCoAデサチュラーゼとパルミトイル-CoAエロンガーゼが誘導されたが、このような誘導は、炭素鎖長が長く蓄積性の高いペルフルオロカルボン酸に共通して認められる現象であった。
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