研究概要 |
本研究はベンゼンの造血毒性が、アリールハイドロカーボン受容体(AhR)をノックアウト(AhR-KO)したマウスで観察されないことの発見(Toxicol sci,2002)に基づいているが、本年度の研究では、このAhR特異的造血毒性が、骨髄における造血幹細胞により特異的な造血発現機構に基づいていることを明らかにすべく、次のような実験を行った。 1)Prinston大学のLemischka IRらの骨髄造血幹細胞由来cDNAライブラリーリストや我々のベンゼン暴露後の発現遺伝子を照合した結果、Weel(D30743)とMph1/Rae28/Edr1(U63386)の2遺伝子は造血幹細胞特異的な異物応答遺伝子であることがわかった。 2)次に、骨髄では、ベンゼン代謝のキーとなる代謝酵素、Cyp2E1の発現を既に観察していた。これは恒常状態での発現がベンゼン暴露によって更に高発現をするという形をとっていた。 3)a.そこで造血毒性と肝におけるベンゼン代謝との関連を明らかにするため、致死線量照射した野生型(Wt)マウスにAhR-KOマウスの骨髄細胞を移植し、ベンゼンによる造血障害の発現の有無を観察した。 b.また、AhR-KOマウスにWtの骨髄細胞を移植し、ベンゼン暴露を行った。 c.a.により、同移植マウスはWtにみられる造血毒性が回避されたので、ベンゼン毒性は骨髄細胞のAhRを介した骨髄におけるCyp2E1によって惹起される代謝物による造血障害であることが示唆された。 d.次にb.により、その背理的証明が可能となるが、これについては進行中である。
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