初期濃度5.5ppmのホルムアルデヒド5lに対して28gのライムケーキ試料を用いたホルムアルデヒド吸着除去実験を閉鎖循環系反応装置を用いて行った結果(6畳間の部屋の天井を厚さ8mmのライムケーキ建材で施工したことに相当する)、30分後のホルムアルデヒド濃度は0.05ppm以下(検知管の検出限界以下)にまで減少した。環境基準は0.08ppmであることを考えると、ライムケーキのホルムアルデヒド吸着除去能力は充分実用的であると言える。種々VOC(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン)の単位重量当たり吸着量をスプリングバランスを用いて測定し、市販珪藻土と比較した結果、パラジクロロベンゼンを除いたVOCすべてで珪藻土の方が多かったが、珪藻土に吸着したアルデヒドは室温での排気処理によって多くが脱離(例えば相対圧0.05で吸着したホルムアルデヒドの場合、室温排気処理で63%が脱離した)し、排気後の吸着量は逆にライムケーキの方が多いことがわかった。一方、トルエンやキシレンの吸着量は排気後も珪藻土の方が多かった。したがって、ライムケーキはアルデヒドに対して特異的な吸着能力をもっているといえる。 この特異的吸着のメカニズムを明らかにする目的で、多孔性炭酸カルシウム(ライムケーキの主成分)、及び市販シリカゲル(珪藻土の主成分)に吸着したベンズアルデヒドの赤外吸収スペクトルを詳細に検討した結果、ライムケーキに吸着したベンズアルデヒドの-CHOに帰属される吸収は著しく減少し、表面の塩基性サイトと強く相互作用していることがわかった。一方、シリカゲルの場合、ベンズアルデヒドは水素結合によって吸着していることが示唆された。
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