近年、アフガニスタンの内戦など世界各地で勃発した地域紛争の終結に伴い、人々の生活に近接して膨大な数の様々な対人・対戦車地雷が取り残されたまま放置され、それら地域の貧困問題と相まって深刻な国際社会問題となっている。危険な地雷原の存在は、今も増加の一途をたどっており、その特殊性や置かれた環境から適切な解決方法が見当たらないのが現状である。これまでは、人海戦術による危険な作業が地雷除去の最も効果的な手法とされて来た。これでは、探査・除去に時間が掛かる上に作業従事者にも大きな危険が伴うため、最近では軍事・民生の両面から様々な最新の探査・除去技術が導入されるようになって来た。 赤外線サーモグラフィーは、対象物から発せられる熱エネルギーを検知し、その表面温度をリモートセンシングに評価する手段であるとともに、適切な画像処理技法を援用すれば複雑な形状を有する二次元温度場をリアルタイムにかつ画素毎に診断・評価すること可能な手段でもある。そのため、この手法は、工学、理学、医学あるいは産業界を始めとする様々な分野で広く利用されている。したがって、本研究では、このような赤外線センシングの利点を乾燥・砂漠地帯の地雷探査に応用して、少しでも作業に関わる危険を低減する技術の可能性について、主に数値シミュレーションの観点から探査に付随するメカニズムや探査限界などについて検討を加えた。その結果、以下のことが明らかになった。(1)太陽放射を援用した赤外線センシングによる地雷探査では、地表面放射率や日照時間帯などにより探査に最適な条件が存在する。(2)赤外線センシングによる地雷探査では、地雷が地中深くに埋設されているほど難しくなる。(3)本手法のデメリットは、放射率の特定が困難なことである。したがって、ジャングル地帯の地雷探査などは、難しいと言える。放射率を特定し易い砂漠地帯では、比較的容易であろう。 赤外線センシングでは、遠隔非接触に広範な対象を同時に探査でき、例えば、無人ヘリなどへ赤外線センサを搭載することでより有効かつ安全な探査が可能になるものと期待できる。
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