研究概要 |
紫外線による有機水質汚濁物貿の分解における除酸素の効果を検討した。 1.EDTA並びにEDTA-重金属錯体の分解挙動 エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は重金属と安定な錯体を形成するために,重金属廃水の沈殿処理を困難とする。EDTA及び錯体を予め紫外線で分解する工程を組み合わせることが有効と考えた。 (1)EDTAとEDTA錯休の分解性比較:Zn,Ni,MnのEDTA錯体の分解は,185nm+254nmの紫外線の照射において,いずれの錯体もEDTA自身に比べて,分解は遅かった。 (2)除酸素の効果:除酸素の効果はほとんど見られなかった。これは,従来の,多くの化学物質の分解速度が除酸素によって著しく向上する結果とは全く異なる。 2.ベンゼンモノ置換体の分解挙動 前年まで,有機塩素化合物の中でも脂肪族の炭化水素を中心に,除酸素-紫外線分解法の有効性を確かめてきた。今回,ベンゼンの塩素を含めた種々のモノ置換体について,置換体の種類による除酸素-紫外線分解法の有効性を検証した。 (1)ハメットの置換基定数と分解速度:置換基定数の小から大の順NH_2,CH_3,OH,無(ベンゼン),Cl,Br,COOH,NO_2の系列において,NH_2置換体から(無)ベンゼンまでは中間生成物が確認されなかった。一方,ClからCOOH置換体では中間体としてベンゼンが確認された。置換基の種類によって分解反応の経路が異なることが示唆された。 (2)除酸素の効果:ClおよびBr置換体において顕著であった。つまり,この手法は,有機塩素化合物の分解に非常に有効であることが検証された。 3.実験廃水にクロロベンゼンを添加してこの方法の有用性を確かめた。 なお,全研究を通して,分解過程での濃度の変化や中間体の同定・定量に高速液体クロマトグラフ(今年度補助金で購入した設備備品)を用いた。
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