食品化工廃棄物などの安価な原料を用いることにより、Coprinus cinereusによるペルオキシダーゼ生産のコスト低減を検討した。はじめに、食品化工廃液として製餡工場からの製餡廃液と炊飯工場からの洗米廃液を用いてペルオキシダーゼ生産を検討したところ、両者とも菌を十分に増殖させるだけの栄養分が含まれていないことが分かった。このため、これらに栄養分を追加して培養を行ったところ、菌は十分に増殖するがペルオキシダーゼはほとんど生産しなかった。この2つの廃液には、ベルオキシダーゼの生産を阻害する何らかの物質が含まれていると考えられる。次に現状の培養液(グルコース18g/L、ポリペプトン5g/L、酵母エキス3g/L)の成分を安価な原料へ代替することを検討した。原料の中で最も添加量が多いグルコースの代わりに溶性デンプンとローシュガー(未精製糖)を用いたところ、両者とも菌の増殖は見られるがペルオキシダーゼの生産量はごく僅かであった。また、原料の中で最も価格の高い酵母エキスの代替として、タンパク質を含む食品化工廃棄物を探索していたところ、マグロの缶詰工場で発生する廃棄部分から生産された製品が既に調味料などとして販売されていることが分かった。この製品(Bacterio-N-KS)を酵母エキスの代わりに使ったところ、従来の方法の70%程度のペルオキシダーゼ生産量が得られることが分かった。現在、添加量の最適化を行っているところである。なお、Bacterio-N-KSは、マグロの化工残査を酵素分解したものである。 上記の検討により生産したペルオキシダーゼを用いてフェノール系の環境ホルモン類の除去を検討したところ、100mg/LのビスフェノールA溶液の場合、反応時間60分以内に0.5mg/L以下にまで、その濃度を低下できることが明らかとなった。
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