食品加工廃棄物などの安価な原料を用いることにより、Coprinus cinereusによるペルオキシダーゼ生産のコスト低減を検討した。昨年度の結果から、Coprinus cinereusによるペルオキシダーゼ生産にはBacterio-N-KSが有効なことが明らかになっている。本年度は、この添加量について最適化を行ったところ、1g/Lの場合に最も高い生産性が得られ、その値は従来の酵母エキスを用いた場合とほぼ同等であった。この場合の生産コストを原材料費から算出したところ、従来法の1/3以下であった。 次に生産したペルオキシダーゼを用いてノニルフェノールやオクチルフェノールなどのフェノール系内分泌撹乱物質の除去を検討した。ノニルフェノールの濃度を1mg/Lに設定し、反応温度やpHの影響について検討したところ、0〜60℃の範囲で反応が可能であり、最適反応温度は25〜40℃であった。pHについては7付近が最適であり、酸性やアルカリ性では急激に除去率が低下した。また、反応後の溶液の急性毒性やエストロゲン様活性について測定したところ、反応前に比べて毒性やエストロゲン様活性が上昇していなかったことから、有害な反応中間体などは生成していないと考えられる。さらに、オクチルフェノールについても同様な結果が得られており、ペルオキシダーゼによってノニルフェノール、オクチルフェノールともに良好に除去できることが明らかになった。なお、ノニルフェノールの場合は、ビスフェノールA(100mg/L)に比べると反応速度が低く、また重合物に由来する沈殿は確認できなかった。濃度や化学構造の違いにより、ビスフェノールAとは異なる反応機構で除去反応が進んでいる可能性がある。
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