研究概要 |
本研究では,エネルギーの効率的な利用と省エネルギーを実現する環境負荷低減型の化学反応システム,具体的には反応器の金属面を直接触媒化した壁面型触媒反応システムの構築を目的としている。今年度は本反応システムの構築に必須な壁面型のプレート触媒の調製と,化学反応に対するその触媒特性について検討を加えた。また,調製した触媒の物性測定から触媒特性の発現機構に関する考察を行なった。さらに,壁面型反応システムの応用と展開を図るために,このシステムを積層化した場合の伝熱特性や反応特性について数値シミュレーションから検討を加えた。その結果,以下の事柄が明らかとなった。 1.亜鉛の置換めっきと鉄の中間めっき,そして銅の化学還元めっきからなる無電解めっきでアルミニウム基板上にCu・Fe/Zn系のプレート型触媒を調製することができた。調製したプレート型触媒は,メタノールの水蒸気改質やCOの水性ガスシフト反応に対して高い触媒特性を示すことが明らかとなった。 2.Cu・Fe/Zn系プレート型触媒の水蒸気改質活性とシフト活性は,反応前に触媒を酸化処理することで大きく向上し,工業市販用の粒状銅系触媒を上回る性能を示すことが明らかとなった。通常の銅系触媒では酸化されることで活性が低下するのが常識であるが,調製したプレート型触媒はまったく逆の特性を有している。下地層の亜鉛が表面に移動することで活性サイトを構築することが要因と推論された。 3.Cu・Fe/Zn系プレート型触媒の水蒸気改質とシフト反応に対する活性の経時変化は,通常の銅系触媒と同様の劣化挙動を示した。しかし,このプレート型触媒は活性劣化後に再び酸化することで活性が初期活性に回復した。再酸化による初期活性への回復は繰り返して起こり,実際の使用を想定した場合,本プレート型触媒は非常に実用的な触媒であることが明らかとなった。 4.吸熱反応と発熱反応が同時に起こるチャンネルを交互に多段に積層した壁面型反応システムを想定し,触媒を充填したシステムの場合と比較した。触媒充填型の場合は各チャンネル間の熱エネルギーの交換が悪く,温度や反応率が大きく低下した。一方,壁面型の場合は熱エネルギーの交換が効率的であり,各チャンネル間の温度分布に大きな差もなく,充填型の場合よりも高い反応率を示した。
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