研究概要 |
平成15年度にトリクロロエチレンの水飽和溶解度への影響を、16年度にトリクロロエチレン原液のガラスビーズカラム中での下方浸透挙動への影響を検討した4種の陰イオン性界面活性剤、8種の非イオン性界面活性剤、1種の陽イオン性界面活性剤、5種の高分子量有機化合物について、トリクロロエチレンの鉄粉による還元分解反応への影響を測定した。 40mLのテフロンシールバイアルに鉄粉0.4gを入れ、トリクロロエチレンが100mg/Lになるように添加した後に気相が出来ないように洗浄剤溶液を注入し密栓した。鉄粉の撹拌効率を高めるために回転式攪拌機で撹拌した。一定時間後にバイアル内部の水溶液を採取し、ヘキサン抽出後FID検出器付きGCでトリクロロエチレンおよび分解生成物の1,2-ジクロロエチレンを定量した。洗浄剤を含まない純水中でトリクロロエチレンは鉄粉の共存により分解し、およそ3日で添加量の半分となった。それに伴い1,2-ジクロロエチレンが徐々に増大した。一方、洗浄剤を添加した場合にはトリクロロエチレンの分解性は洗浄剤の種類により大きく異なった。陽イオン性界面活性剤の臭化セチルトリメチルアンモニウムや陰イオン性界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムでは分解速度はほとんど影響を受けなかったが、検討した全ての非イオン性界面活性剤やラウリン酸ナトリウムでは分解速度は著しく低下した。界面活性剤以外では大きな影響は見られなかったが、ポリエチレングリコール1000では洗浄剤自体が分解されて大量のガスを発生した。 このように、洗浄剤の種類により鉄粉によるトリクロロエチレンの分解反応は阻害を受ける場合があることが明らかとなった。実際の土壌・地下水汚染現場ではトリクロロエチレンの浄化方法として透過壁に鉄粉を混入させて分解を促進させる処理法が多く用いられていることから、洗浄剤の種類の選択は重要な因子であると結論できた。
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