研究概要 |
1.ナノ粉末の合成・緻密焼結体の作成及び電解質特性評価 Sm_2O_3-CeO_2系を例に、共沈法の条件を選択することで、平均粒径30nm程度の球状粒子やアスペクト比10程度の平均粒径15nmからなる柱状粒子の作製を行い、そのうえで、この2種類の粉末を用いて、常圧焼結法により、高密度焼結体を作成した。得られた焼結体は、理論密度の95%以上に緻密化していた。SEMによる観察では、この2種類の焼結体の微細構造に差はなく、X線回折試験からも、両者には大きな差はなかったが、球状粒子を用いた焼結体の導電率(500℃,DC三端子法:0.65SK/cm,E=60kJ/mol)は、柱状粒子を用いた焼結体(500℃,DC三端子法:0.20SK/cm,E=74kJ/mol)の値を大きく上回るものであった。この理由を考察するために、微細構造をTEMにより観察したところ、柱状粒子を用いた焼結体中には、50nmを超える大きなマイクロドメインが存在していたが、一方、球状粒子を用いた焼結体中では、マイクロドメインサイズは、10nm程度と小さいものであった。よって、この秩序構造を有するマイクロドメインが、導電特性を著しく低下させているものと考察した。 2.電子線回折図の詳細な検討 マイクロドメインが多数現れる領域を中心に、TEMにより電子線回折図を解析した結果、極めて小さな強度で、b型希土類に帰属されるエクストラ・スポットが観察されたことから、マイクロドメインは、ドーパントのわずかな片析が原因となり発生するものと考察した。よって、導電率に影響を与えると思われるマイクロドメインの発生は、合成法に大きく依存しており、合成法の詳細な検討により、こうしたドメインの発生や成長を抑制し、優れた導電率を引き出すことが可能であると考察した。
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